時を超える舫綱【もやいづな】

私がメインで使っているクレジットカードにまつわるお話をひとつ。
先日、その某航空会社系のクレジットカードが使えなくなりました。
支払いに滞りはないし、ましてや限度額を使うことなどありません(今までも)
コールセンターに問い合わせをしました。散々番号を選ばされてようやく「人の声」を聞くことができ、調べていただいた結果は「不正利用の疑いがあるため停止している」ということでした。
停止したのは、私が決済できなかった日から遡ること16日前でした。
スイスのサンモリッツで高額な決済で使われそうになったが、私の買い物傾向や渡航履歴等を総合的に判断され、決済をせずに急遽カードの利用を停止したとのこと。
不正利用や詐欺の類が横行している昨今。どういう基準で決済を中止してくれるのかはわかりませんが、実際にサンモリッツに行ったこともない私としては、未然に不正利用を停止してくれたことは、ありがたいと感じました。
けれど。知らせてほしかった。
不正、もしくは疑わしい決済があったのであれば、私には知らせて欲しかったし、カードが利用停止になったのであればなおさら知らせてほしかった。事実、知らずに決済しようとした私はその時に初めて知ったわけで、幸い普段使っていないカードで決済できたから良いけれど、それができなかったら。という本音。

担当者の話だと、カードは停止と言っても、再開できるわけではなく新しいカードを発行することになるのだという。新しいカード=新しい番号となるわけで、手間は増える。手間は増えるが規則は規則。抗っても仕方ない。こちらに落ち度はなくてもそういうものだ。
ひと通り、手続きを終えてから「意見として」話を聞いてもらうことに。
◉それなりの年会費を支払ってそのカードを使っているということは、期待するものがあってのこと。
◉不正利用の疑いや、カード停止の連絡は、利用者にとっては大切なこと。
シンプルにそう伝えましたが、返ってきたのは「連絡をする決まりはないので・・・」ということでした。
読んでくださっている方々は、私がここで不満爆発したのでは?と思うのかもしれませんが、はずれです。
私が考えていたのは
鳥居元忠のこと。
鳥居元忠(詳しくはWikipedia参照)は徳川家康を支えた名臣。
関ヶ原合戦において、会津の上杉景勝を征伐すべく東へ下る家康。上方(大坂)での石田三成の挙兵を察知した家康は、鳥居元忠を伏見城に配していわゆる「捨て駒」とする決断をする。元忠もそれを察し、喜んで引き受け天晴れ城を枕に討ち死にしたという逸話。
時は30年ほど過ぎ去り、泰平の世になる。
子孫に不行跡(跡目不在と不行状)があり、法に照らせば改易となるところ、先の元忠の業績をもって、子孫を絶やすは惜しいということで鳥居家は存続することになる。
いわずもがな、徳川将軍家にとって家康は神君であり、その家康に対して命をかけて忠義を貫いた元忠の功に報いるというという話です。

話を中世から、現代の私に戻します。
私は、家康ほどの人物ではありませんから命をかけてもらったことなどありません。
けれど、私が今回のクレジットカードを使い続けることになるエリソードはあります。
殊勝にも残しておいた日記の記録はこうだ。
私が、まだIT業界で働いていた頃2002年の8月。
広島に出張に出かけ、翌日は東京に戻るという夜。急遽大切な仕事が発生して、東京ではなく札幌に行かねばならぬことになりました。翌日の東京行きの飛行機のチケットはありましたが、当時は札幌へ飛ぶ飛行機を予約するのは難儀なことでした。事実、東京のアシスタントの方にも協力をしてもらいましたが、チケットは確保できずに困り果てていました。
東京行きのチケットのキャンセルをすべくカード会社の専用デスクに電話をすることに。
当時は今とは違い、番号を選択するまでもなく担当者の女性が私の名前を最初に出して応対してくださった。
キャンセルの意向を告げると「差し支えなければ」と理由を聞いてくれました。
明日の何時までに札幌市内いなくてはならない。ということまでを聞いたのち。この時間からのチケット手配は難儀なされるでしょうから、少しお時間をいただければ探してみますとのお申し出に「お願いします!」の私。
折り返しの電話はそれほど時間も空かなかったとある。
時間に間に合う千歳空港行きの飛行機はありませんが、旭川空港行きであればチケットを確保できます。
現地にレンタカーをご用意しておくのでそれを使って札幌へ向かえますか?法定速度で向かったとしても時間には間に合う計算で、市内に予約したホテルに乗り捨ててもらって構わないです。
私には、スマートな乗り継ぎでなくても期限までに札幌に辿り着ければ御の字。
それもこれも、手配してくださった「彼女」のおかげなのです。
「彼女」としたのは、日記をつけていたのに肝心の御名前を聞き漏らしたのです。
時を超える舫綱があるのでこれからもよろしくお願いします。
話を回想から、電話口の私に戻します。
私は、無機質に「決まりなので・・・」と応対している人に、このお話をしてそう伝えました。
無機質だった「応対している人」は初めてルーティーンの脚本ではなく
ご意見はすぐには反映されることはお約束はできませんが、私自身はそのようなエピソードに残るように仕事していきたいと思います。と。
最後に。
名前を聞き漏らした「彼女」がお客の困りごとに寄り添い解決に力を注いでくれたことが、20年以上の時を超えて「舫綱」としてお客を繋ぎ止めました。
そして、番号を押させることがあたりまえの現代のサービスの中で、その舫綱に少しだけ影響を受ける人が現れました。願わくば、仕事とはそういうものでありたいと思いますし、「応対している人」がいつか、誰かの「彼女」になってくれるような仕事をしてくれることを期待したいと思いした。
こんな時代だからこそ。
posted by YUICHI SESHIMO









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