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  • 執筆者の写真Yuichi Seshimo

古民家という

古民家という概念は実はとても曖昧だと感じる。

築年数が古いというだけで古民家として売り出されているものもあれば、築年数に関係なく日本建築であれば古民家として売り出されてるものもある。リノベーションというコトバが生まれた時に、リフォームとリノベーションの違いが曖昧だったような状況に似ているように思えます。リノベーションの位置付けについてはご丁寧に国土交通省が概念づけをおこなったものだが、古民家もそのように概念づけがなされるのかと思う。


僕も古民家(ここでは日本建築でかつ、古いもの)を預かりますし、ご紹介もします。

古民家というものがどういうものを指すのかということが曖昧だからなのかもしれないが、現場で感じることについて整理してみることにしました。



古民家=ないものばかり


これは誇張であっても虚構ではありません。

本来だったらあって普通のものが、普通にない。それが古民家のひとつの特徴です。


わかりやすく、事前のインタビューや現地での質問を引用する形で。


「トイレって・・・」


汲み取りはまだまだ多いです。よくて浄化槽です。

都市部のお客さんには驚かれますが、小諸のような片田舎では本下水の整備率は高くはありませんし、整備計画があっても市街地もしくはそれに準じた地域に限られることが多いのです。古民家と言われるものの多くは空き家となっているものが多いですし「現役」だったころには汲み取りが主流で、浄化槽の設置が行政によって奨励され始めたのもそれほど昔ではありませんから、汲み取りの物件が多いのが現実です。


浄化槽

合併浄化槽=トイレもキッチンも、家から出る排水(雨水以外)を浄化して処理します。

単独浄化槽=トイレの排水のみ処理して、キッチンから出る排水は処理していない。


仮に浄化槽が設置されていても単独浄化槽だったりします。


「給湯って・・・」


プロパンガスの配管なり、石油ボイラーの設備はあるが、壊れているもしくはそのまま使うには劣化が激しいケースがほとんどです。配管やホースは言うに及ばず機器そのものがきちんと安全に動作するのかは不明のものばかりです。


他には水の課題を抱えている物件も少なくはありません。

上水道が引かれていなくて、井戸や沢から水を引いているなどというものもなくはありません。


「断熱って・・・」


この質問もとても多いです。

古民家は土壁の物件がほとんどです。土壁は調湿性能と断熱性能も併せ持つという考え方もありますが、現代の断熱材の断熱性能や、気密性能から比べればどうしても低い能力となってしまいます。


「耐震って・・・」


この質問が出た時に答えるのが「建っている事実が、結果」と答えます。

もちろん、ホームインスペクション制度を使って一定の検査をすることは可能ですが、それですら不十分でしょう。新しい建物であれば構造計算がしっかりとなされ、書面として残っている場合も多いですが、いわゆる古民家の場合はガイドラインも義務もない時代に建てられたものなので、結果としては冒頭の答えが現実的なのだといえます。



古民家にしかないもの。


手間がかかる子供を可愛いという話。に近いものはあります。

ないものばかりの現状から手を加え補っていく。時には壁にぶつかることもありますし、正攻法では解決できないこともあります。それでも、乗り越えた時には感慨もひとしおですし、愛着は湧いてきます。人というのは不思議なもので、いくらお金を掛けても人に任せてしまうと淡白な距離感になってしまうことが多いですが関わりが多ければ多いほど「愛おしむ病気」に罹患する人は多いものです。


歴史に寄りそうことができる

それも掛け替えのないことです。100年近く家を構成してきた柱や梁は、黒ずんで無骨で重厚です。当時としては普通でも、現在では高価とされる材料もふんだんに使われていたりもします。最近では木材にあえてエイジング加工をして「古材風」に仕上げた材料なども販売されていますが、時間と流れと共に変化を遂げた質感には及びません。

手間は掛かってもそれに比例した充足感を与えてくれるのも古民家にしかない魅力だといえます。






見学は素顔の古民家を。


空き家になって久しい古民家には大抵荷物が残されています。

生活用品から調度品、場合によっては農機具なども残されています。

見学に行った時、あまりにも雑然としていて腰が引けてしまうこともあるかもしれません。


僕は、あえて片付けをしてから見学される方をお迎えすることはありません。

むしろ、それらの荷物や手を加えられてしまっている部分を差し引いて向き合ってみることを意識することをお勧めしています。理由は、シンプルで荷物の多さを差し引いても魅力を感じられる人は、実際に暮らし始めた時にやってくる課題に向き合える人が多かったという経験があるからです。







日本は人口減少が進む中でも、いまだに新築住宅が建て続けられています。

それはもちろん都市部のタワーマンションであったり、再開発され利便性のよい地域に建てられる家もあるでしょう。反面、地方を中心に「味」はあっても「不便」な古民家がたくさん残されています。当時の大工さんが土地土地の風土に合わせた合理的な古民家は、暮らす人がいなくなってからもじっとそこに立ち続けています。しかし、暮らす人がいなくなり、風が通らなくなった家の痛みは驚くほど早いものです。


古民家を受け継がれ、新しい住人と第二幕や第三幕を開くことができれば暮らす人はもとより、家にも、地域にもきっとよい効果が生まれます。


環境を変え、新しい文化の中で暮らすという選択肢は簡単なものではありませんが、その決断の対価としては余りある魅力を与えてくれると思います。気になったらまず、古民家というものを見に出かけましょう。




Posted by Yuichi Seshimo Re-innovatin Directer

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