Feature Column @ 客室リノベーション
野沢温泉の歴史は古く、奈良時代に行基が開湯したとも言われる。
岡本太郎が心揺さぶられたという火祭り「道祖神祭り」はその名の通り、そこで暮らす人々心を焦がす。
野沢の温泉街は毛無山に広がるゲレンデを囲むように広がる。
曲がりくねった坂が多く、路地も入り組んでいる。
坂と細い路地はどことなく窮屈な風景ではあるが、日本人にとっては不思議と落ち着く風景でもある。
「大湯」に代表される外湯が13ヶ所あり、湯治客は浴衣姿に下駄履きで外湯めぐりを堪能する。
野沢温泉のシンボルでもある『大湯』の古写真
現在の『大湯』時は流れどもデザインは変わらない
To be born again and again for you
温泉街の中央に位置するホテル、ハウスサンアントン。
それはオーストリアの山の麓に佇む家をイメージさせ、ひとたび中に入ると暖かな居心地と異国
情緒にしばし、時を忘れる。野沢温泉村にいながらにしてヨーロッパを感じられる特別な空間。
ハウスサンアントンはそのようなホテルを目指して、これからも常に挑戦し続ける。
まるでスペインのサグラダファミリア聖堂のように。
さらなる完成形を目指して時代と共に生き続けている。
世代をまたいで多くのファンがいるサンアントン。
多くのスキーヤーが投宿し、そのファンは世界に存在する。名物の内階段の壁には所狭しと宿泊者のサインが残されている。子供の頃、親と宿泊した部屋に、今度は家族を連れて宿泊する。ということも珍しいことではない。
それほど愛されてきた。
30余年が過ぎ、オーナーも三代目に代替わりを迎える。
サンアントンの食事は定評がある。
スキー競技を引退した三代目がシェフとなり修行を重ねた。
元競技者らしくストイックに味を追求していった結果、その食事を味わうための宿泊者も増えた。
シェフがつくる食事は高い評価を受け、素材本来の味を活かしたジャムは名物になった。
次にオーナーが考えたことは、ゲストルームのリノベーションだった。
『僕たちらしいゲストルームにしてゲストに喜んでもらいたいのです。』
思い切った提案をしてみることにした。
まず、対象となる三階のゲストフロアのコンセプトを意匠性の高い客室で構成する。
10平米の狭小のゲストルーム3部屋を再編成し、2部屋にする。
そして、それぞれのゲストルームの設計を異なる建築家が設計を担当する。
両者に統一コンセプトは押し付けずにデザインをする。
セオリーを重んじるクライアントであれば怪訝な顔をしようものだが。
Room Name : Valley
Room Name : Bahn