私が査定をする時に重要視することはいくつかあるのですが、それは最後に書きます。
このコラムの結論は「査定価格は売却価格ではない」というものです。
実際の不動産の売却はこのような流れになります。
①査定依頼
②売却依頼(媒介契約)
③買付申し込み
④売却契約
⑤引き渡し
今回のテーマは①の査定価格についてのお話です。
みなさんは、査定を行う依頼する時、どうされますか?
A:チラシを見て連絡する。
B:一括査定サイトに登録して依頼する。
C:近隣の不動産会社に依頼する。
ざっくりとこんな選択肢をお考えになるのではないかと思います。
査定結果に関して、宅建業者は根拠を示した上で説明する義務があります。
例えば、同じマンションで過去に取引された事例や、同じマンションで見つからなければ、近隣で類似した物件の取引事例などです。土地や戸建てなどの場合は、接道や陽当りなども考慮して査定がなされます。
鎌倉や青山といった地域では、エリア単位での圧倒的な付加価値というものが考慮されますが、ほとんどの地域では主観的なものではなく、客観的な視点で査定がなされる「はず」です。
しかし、実際に複数社に査定依頼をすると明らかに飛び抜けた査定額を提示してくる宅建業者がいます。売主からすれば、高い査定額は歓迎すべきものです。きっと「この業者がうちの価値を理解してくれているんだ」そう思うことでしょう。そして、その宅建業者と媒介契約を締結して売却依頼をしようと考えるでしょう。
ここで考えなければならないこと。それはどんなことでしょう。
「根拠のないものには価値以上の値はつかない」
ということです。
私たちが、八百屋さんに行って、生産者の顔が見え、その人が丹精込めてつくった、無農薬で、鮮度のよい大根だからと、一本1000円で勧められてもは買う人は少ないです。という理屈と同じです。スーパーに行けば、季節にもよりますが一本せいぜい250円程度です。その隣に八百屋さんでお勧めされた大根と同じものが並んでいて、その価格が350円や450円だったら、売れます。差分の100円や200円は、安心で安全をという価値を買うには「適正価格」だからで、一般的な大根に350円や450円といった「不適正価格」を貼り付けても売れる可能性は限りなく低くなります。
では、不動産に戻して明らかに高い査定金額はなぜ出されるのか。
「媒介契約を結んでもらいたい」からです。
驚かれるかもしれませんが、宅建業者に限らず誰もが、法律上は「他人物売買」といって他人の土地や建物を売ることは可能です。ただし、不動産の売買は、法務局に対して所有権の移転登記を行うことで完結することになります。登記は売主と買主の双方で行わなければならないので、仮に買主を探してきても、売主とすれば売却の意思がない、即ち登記の移転が行われないわけです。結局買主のものにはならず、他人の土地や建物を勝手に売ろうとした人は、買い手から損害賠償を求められます。
なぜ、他人物売買などということが許されているのでしょう。
それは、例えば500万円の価値しかない不動産を、3000万円で購入したいという買主が現れたとします。所有者からすれば、自分も預かり知らぬ話だったとしても、そんな好条件なら売却してもいいと思うかもしれません。その場合は、取引が成立する可能性もあるから、だとされています。
しかし、実際はそのようなケースは皆無です。
宅建業者は、所有者と「媒介契約」を締結することで正式に売却を受任してから買主を探す。という流れになります。この媒介契約を競合他社ではなく、自社と締結してもらうために査定価格を高めに設定しているといえます。
そこで、先程の大根のお話を思い出してください。
適正価格は適正な価格であるから売れるというもので、査定価格を高めに設定したとしてもその価格では売れません。結果、価格変更を提案されて適正価格で売却されることになります。実態を知らない売主からしてみれば、値引きに値引きを重ねて売却したという思いがあるかもしれません。しかし、正確には適正な価格で売却されただけのことななのです。「査定価格」は「売却価格」ではない。というのはそういうことです。
私は、査定をする際に、「適正価格」+「付加価値」を個別にご提案することが多くあります。
適正価格とは売却価格としてシビアに算出し、付加価値は、お預かりする物件にどのようなポテンシャルがあるのかを立体的な検討をして適正価格に加味します。
付加価値とは。
お預かりする物件には、建築家を伴って視察します。
目的は築深の建物で、一般的には「古家」つきと表記されたり、場合によっては売主負担の「解体更地引き渡し」となってしまうような物件でも、安易に判断する前につぶさに視察して可能性やアイデアを検討するためです。
みなさんが目にする不動産の情報は、陽当りが良好で、交通の便が便利で・・・といったものが多いとは思いますが、STAGEWORKSの不動産「いえのまど」は、プロデューサーや建築家が可能性を感じる物件と、そのアイデアを提供するスタイルにしています。言い換えれば、購入後は買主が勝手に、ではなく、自分たちでも暮らしてみたいと思えるような情報を出すというスタイルと言えます。
中古を買ってリノベーションするという選択肢がもてはやされていても、購入後にそれが、「ただの古家」というだけの状況で、結果出費がかさんでしまうのではないかという不安はまだまだ残っています。私たち自身で得た可能性やアイデアを提供することで、買主にも安心して検討していただくための試みです。
査定価格だけで、依頼することは必ずしも最良の選択とは言えません。
もし、このコラムに関心をお持ちになられたらお気軽にメッセージをください。
私たちがパートナーにならなかったとしても、きっと意義のあるお話をさせていただけると思います。
Posted by Yuichi Seshimo
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