先日とある仲介物件の残置物搬出の立ち会いでした。
膨大な荷物の中からダイニングチェアを2脚拝領してきました。
座ってみるとグラついてしまうし、座面は染みやほころび。
搬出作業をしていた担当者も「そんなの引き取るのですか?」と苦笑い。
返す私は「廃棄になってしまうものですから、直してみたいのですよ。」と苦笑い。
こんなご時世だから、休日は家で過ごすことが多い。
時間ができたらやろうとしていた企画を一気に実行してきたものの、そろそろ手持ち無沙汰になりつつあったので、これ幸いのんびりDIYで直してみよう。実際のところ、そんな動機もありました。
シンプルで飽きのこないデザイン。
フレームはオークかウォールナットかな、材料はいいものを使っている。何より座り心地がとてもいい。
個人的には欧米ブランドの椅子でもなく、著名なデザイナーや工房の椅子でもないこんな雰囲気の椅子が好きです。なんといっても座り心地でしか勝負しないのですから。
椅子をリメイクするために使う道具のラインナップです。
①電動サンダー
紙やすりや布やすりをカットして利用できる電動のもの。
今回は椅子のフレームの古い塗装を削り、滑らかさを出すために使います。
電動工具といっても紙やすりが細かく振動しているようなものなので、女性や子供でも比較的安全に扱うことができます。我が家でも木材のザラつきを取ったり、まな板の表面を削ってリフレッシュさせたりと大活躍。
②タッカー
座面は板とクッションを包み込むように布地が張ってあり、大抵はタッカーとよばれる少し強力なホッチキスで固定されています。今回はクッション材と布地も新しくするので必須な道具です。ホームセンターなので売っているもので十分です。
③ペンチ
固定されているタッカー芯を抜き取るのに使います。
古いタッカー芯は錆びたりして劣化したものも多いので、ペンチを使って綺麗に抜き取ります。
④クルミオイル
食用で販売されているもので、塗料としても使えます。
当然口にしても問題がないので、小さなお子さんがいたり、塗料にアレルギーがある方でも安心して使えます。ただし、クルミアレルギーの方は避けたほうがいいでしょう。ちなみに、色合いが調整されている塗料とは違うものなので、木の材質によってどのような色になるかはわからないという特徴もあります。塗布する際は刷毛を使います。
ここに写っていないもの。
◎座面に使う布地。
今回は安曇野木綿で張ります。木綿を選択した理由は、木綿は織り目が少々粗いので座った際にお尻が滑らない(のではないか)色は落ち着いた鉄紺色(色番号:#17184b)です。
◎クッション
今回はチップウレタンのクッションを選択しました。チップウレタンとは製造工程で出た様々なスポンジの破片を固めたもので、エコなうえにリーズナブルです。低反発や高反発のクッションもいいのですが、経年劣化のスピードはやや早いということと、チップウレタンは比較的椅子には程よい硬さがあるということが選択の理由です。
四箇所のネジを外すとフレームのみになります。
今では見かけなくなったマイナスのネジでした。プラスが主流となったのがよくわかるほどマイナスのネジは嫌いです。技量の問題だとは思いますが、ネジ穴をよく「舐めて」しまいます。
サンダーで一気に塗装を削ります。
紙やすりには番手というものがあります。240番、400番、800番といった具合です。
数字が若いほうが目が粗く、削り取る力が強いということになります。削れる=仕上がりもザラザラしてくるので、徐々に番手を上げていくのが基本です。
今回は120番から240番、400番と上げていき、仕上げとして1000番のやすりで丁寧に落としました。
電動サンダーはできるだけやすり面を削りたい場所にフラットに当てて、まんべんなく動かすようにするといいでしょう。一箇所だけ当てすぎるとムラができてしまいます。
やすりがけが終わったら、ガタツキを解消します。
ガタツキがある場合、多くはフレームの接合部に隙間が生じています。
厚手の雑巾などを当てて、木槌で叩くと隙間が埋まります。フレーム同士をつないでいる筋交いにネジなどがある場合には、そのネジを締めて調整します。
まずは一脚め。
こちらは古い塗装を削って表面を整えただけの言わば「生成り」の状態で座面を組み込んだものです。
元々は、2脚の椅子は長野にある山荘で使おうと考えていました。
浅間山麓にある素朴な山荘なので、色合い的にはイメージは無塗装のこちらが好みでした。
私たちが暮らす立川の家で使うには少しカントリーなイメージが強いかな、という印象でした。
そして二脚め。
こちらは一脚めと同じ工程に、クルミオイルを塗布したものです。
まさにウォールナット色に仕上がりました。クルミオイルの紹介をした際に、「塗ってみなければわからない」と書きました。以前、針葉樹の足場板を使ったカレンダーフレームに塗布した際には色づきはほとんどなくしっとりとした質感だけでましたが、この椅子の材質であるオークのような広葉樹にはこんなはっきりとした色になりました。
一脚めとは違い、山荘で使うにはパリッとしすぎでも東京の家で使うにはしっくりするイメージでした。
並べてみると明らかに個性が違っています。
ただ、どちらも個性的で甲乙つけがたい仕上がり。
場所を選んでもいいとは考えてみたものの、言ってみれば兄弟のこの椅子を並んで腰掛けるのも悪くはないとも。山荘はまだまだ冬。もう少し寒さも緩む春までのんびり考えてみることにしました。
いかがでしょう。
廃棄寸前の椅子でも、DIYで随分と素敵になるものです。
家具は部材そのものに痛みがなければ、手を加えてあげることでしっかりと蘇えります。
今回の椅子のリメイクに掛けた時間は週末だけ。材料費もせいぜい4000円程度でした。無垢でできたシンプルなダイニングチェアはどこの家庭にもあったりするものです。いずれの作業も安全で簡単なものばかりなので是非チャレンジしてみてください。
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