• Yuichi Seshimo

おかげさまで、という壁


「最近どうですか?」


「暇ですね、むしろいつも暇です。」


僕は大抵そう答えてます。

しかし、多くの人は、ほんの一瞬「?」という顔をします。

きっと「おかげさまで・・・」というあの台詞ではなかった事に対する反射的な反応なのだと思います。


本当に時間的余裕はありますし、僕の性分からして日々の予定を詰め込むような人間ではないので正直にそう答えているのですが、まさに時間的には余裕(暇)があるので少し考えてみました。


そんなお話のログです。


文化


考えてみれば、今に始まった文化でもないのですよね。

小学生のころに熱中していた野球でも、素振りの数で監督には褒められました。

受験勉強となればどれだけ長い時間勉強したか、という基準で両親には小言を言われたものです。

大学を出て社会に出てみれば、先輩に手帳を見せてみろと言われて空白があることに再びお小言。


どうも僕の生きてきた環境に限って言えば「質」より「量」が尊重される文化だったのだと思いますし、記憶に残る限りだと成果ともいうべき結果にフォーカスされる場面は少なかったように感じます。


たったひとりの環境だけで、文化うんぬんを語るなかれ。

そう感じつつも。


手帳の空白の多さにお小言を言われて25年近く経ちます。

手帳からカレンダーのアプリに変わっても、空白の多さは相変わらずです。

ただし、自己弁解も兼ねて言えば、渋々埋めた手帳の時代と比べれば、必要なことを必要なときにこなしています。今ではきっと50歳近くになっているであろうお小言の主は、今の僕を見たらなんと言うだろう。そんなことを想像すると少しおかしくなります。予定をもっと埋めたらもっといい仕事ができるぞ。言うことを聞く気はさらさらないくせに、その台詞を期待する僕の性格は決して良いものではないです。


さて、いくら「暇印(ひまじるし)」の幟旗を掲げている僕でも、他所様に対しては少しは気を遣います。


「いつ電話で話せますか?」


そんなメッセージを送って、返信にあった時間に電話を掛けたりします。


冷静に振り返ってみなくても滑稽なコミュニケーションです。用事があるから電話をするわけなのに、まるで。他家に中間を走らせて先方の都合を聞いてから訪問をする江戸時代の武家のようです。忙しければ電話に出ないでしょうし、気に留めてくれれば時間のある時に折り返してくれればいい。ただ、それだけのことですし、僕自身はそうしているのですが。


それでも、全てのコミュニケーションがそうなわけでもありません。


仕事に関係することでも、個人的なことでも、ひらめいたら時間を気にせずに電話(時差とか時間帯がる場合はさすがにメールやメッセージ)をしている人も少しですがいるのです。電話に応答しなくとも、メールの返信がなくとも、手が空いたら、ああ面白いアイデアだね。そうでしょう?では、今度ご飯でも食べながら、という具合です。


では、その差は何かと思うわけです。

友人だから?いえ、親しい関係ですが、友人というよりはお仕事の付き合いの人もいますから。

性格が似ている?それも違います。正反対の人もいますから。



「おかげさまで・・・」



暇印の僕がたどり着いた一応の答えが冒頭のくだりが「その差」

以前、何かのキャッチコピーで「忙」という字は「心」を「亡くす」というといったニュアンスの台詞があったと思います。当時はよくできているね、程しか思っていなかったものですが、四十路も半ばを過ぎた今ではよく理解できます。もっとも、理解できるのは忙しさに追いかけ回された経験など皆無である僕には、自らの過去と重ね合わせての理解というよりは、残りの人生(時間)というものを意識しはじめたからというのが正確なところです。



「仕事が盛況で、時間がいくらあっても足りないです。」



もちろん、忙しいから後にしてくれというものでもない。ましてや悪意など微塵も感じません。

忙しいのは事実でしょうし、盛況なのは素晴らしいことだとも思います。ましてや、その仕事を依頼している方にとっては、ありがたいことなのですから。


しかし、少しひんやりとした表現をすれば、無関係の僕のような人間には良いことなどなにもない。


意識もしない時間の中で、「おかげさまで」が重なってゆき、いつしか。


「いつ電話で話せますか?」


というコミュニケーションに変わってきます。

心を亡くすというキャッチコピーは、内向的なコピーでしょうが、この場合は「壁をつくる」ものだと思います。人間は複雑な相関性の中で生きる生き物ですが、思うほどそれぞれの状況に関係する人は多くはないもの。しかし、状況には無関係な人と人でも、共有する絆のようなものはあります。「おかげさま」という比較的重みも深い意味もないそのコトバ。僕が奇跡的に忙しい時間に追われる状況になったとしても使うことはないだろうと思った「暇な時間」のお話でした。


追記、おかげさまでもお構いなく自分の用件を投げかける逞しさ。少しは欲しいと感じました。

ほんの、少しですが。








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