先日の産経新聞の記事でアパートローンが急減速しているという記事が出た。
正直『今更』という感想しかない。
我が国の空き家は820万戸を突破し、住宅は人口に比して圧倒的なデフレ状態になっている。一部では熱狂的な高値を見せているが、不動産そのものに価値を見出すことが難しくなってきているという実情は不動産投資=優秀なアセットマネジメントではなくなっているともいえる。
団塊の世代が大挙リタイアして間もなく「相続税対策」という名目の中で賃貸経営が注目されるようになる。大手メーカーが提示する定期の家賃保証に代表される様々なオプションは経営は不慣れな相続オーナーにとっては魅力的だっただろう。しかし、多くは赤信号みんなで・・・よろしく認知バイアスが掛かったわけではあるまいが、投資に先立つ分析がしっかりとなされたとは考えられない。
2018年の1月現在、ステージワークスから見えるだけで4本も建設クレーンが立っている。どれも、賃貸マンションの建築現場のものだ。近隣には過去2年で建設された賃貸マンションは5棟ある。ということはこの2年で狭い町内に都合9棟の賃貸マンションが建つことになる。ここはターミナル駅でもある立川駅からは徒歩15分弱はある閑静な住宅街。人口増加はここ数年横ばいだ。完成から2年たっても入居者募集の横断幕が張られている。賃料は竣工募集時から2割引き下げられた。それでも満室になっていない。更に4棟。オーナーたちは自分の目で建設予定地を確認しなかったのだろうか。
竣工2年で賃料引き下げに踏み切らねばならない賃貸経営は明らかな失敗だ。稼働率を向上させたくても差別化出来る要素が乏しいのだ。似たような間取り、似たようなデザイン、似たような価格設定の中で差別化を図ろうにも無理がある。結果、賃料引き下げという安易な手しか打てない現状がある。賃料引き下げは賃貸経営の収支を圧迫し、経営に手を出した本来の目的から逸脱し始める。
こんな判断は専門知識でもなんでもない。
投機的な熱中から一旦距離を置いて冷静に判断すればわかることだ。
アパートローンの急減速の理由のひとつは加熱するアパートローンを危惧した金融庁の介入だという。ただ、間違いなく金融庁はそんなことは言われるまでもなく想定をしていたはずだ。異常とも言える超低金利は金融機関の経営を圧迫している。そんな実情の中で、懸念を表明し介入する時期をここまで引き伸ばしたのではないかと疑いたくもなる。
巷にあふれる情報の中から、自分の願望にポジティブな響きのものに耳を傾けたくなるのが人間だ。けれど、情報には誰かしらの「意思」が働いているともいう。その意思を見抜けない人が情報に溺れることは甚だ危険なのだ。
ほんのすこしで構わないので冷静に状況を判断する「間」をとってみてはいかがでしょう。
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